『真っ赤なりんご』第四話:兵士とりんご

ある街のお話。
その街の真ん中には大きな丘がありました。
丘に登ると街が全部見えました。
学校も公園も百貨店も。
隣の街の観覧車だって見えました。
丘の上には小さなりんごの木がありました。
木の他には何もありません。
丘の上にはりんごの木がただポツンとあるのでした。
りんごの木は実を一つだけつけていました。
たった一つだけ。ポツンとあるのです。
そのりんごはもうそれはとてもとても真っ赤で町中のどのりんごにも負けません。
明るい時間には陽の光で輝き暗い時間には月の光で輝きます。
ある日一人の英雄がやってきました。
白い馬に乗っていました。矢を背負っていました。
時代を飛び越えて絵本からやってきたかのような兵士でした。
兵士はりんごをじっとみつめて何か悩んでいる様子でした。
りんごはそっと話しかけました。「私に何かついている?」
兵士は一目で分るほどとてもとても悩んでいました。疲れてもいるようでした。
「英雄になりたいのです。」兵士は言いました。
「私は英雄になる練習をしています。英雄になりたいのです。
そのために矢の練習をしました。そのために結婚をし息子をもうけました。
あとは息子の頭の上に載せるりんごがあれば私は英雄になれるのです。」
りんごは驚きました。
彼はりんごをもぎとり自分の息子の頭の上に載せ矢で射抜こうとしているのです。
でもそれも運命だと思いりんごは言いました。
「どうぞ、ご自由に。」
兵士はまだ悩んでいました。
「お言葉はありがたいのですがあなたはとても私が英雄になる瞬間にふさわしいとても輝くりんごなのですが・・・。せっかく見つけたのに、美しすぎてもぎとることができない。
更にはもぎとれたとしても矢で射抜くことができないかもしれない。そうすると息子の命が危ない。」
りんごは言いました。
「ではこうしてください。私をもぎとって家に持ち帰って息子さんにプレゼントしてください。きっと喜んでもらえます。」
兵士は言いました。
「それでは英雄になれない。」
りんごは言いました。
「英雄とはなんですか?」
兵士は言われたとおりりんごをもぎとり家に持ち帰り息子にプレゼントしました。息子はたいそう喜びました。

(つづく)
[物語] 川辺みほ(GiantGrammy)
GiantGrammyの女優であると同時に、GGプロデュースやインディペンデントシアタープロデュース「極-kiwami-」参加公演では、作家としても活躍。 GiantGrammyのサイトではipの連載第一弾だった「川辺的架空小話「Re:」をラジオドラマ用に書き直してオンエア中! 劇団サイト=http://giantgrammy.com/ 個人ブログ=http://ameblo.jp/mihogram/

[イラスト] 千歳晶子(隕石少年トースター)
ほっこりするコメディ「ピクニックコメディ」を信条とする劇団、隕石少年トースターの女優。小学生からやり手の突撃レポーターまで幅広く演じる。 ミュージカルと軽音部で鍛えた歌声や、イラストなど多彩な才能を発揮。今回で川辺みほとの初コラボが成立! 劇団サイト=http://www.inseki.jp/ 劇団ブログ=http://sky.ap.teacup.com/inseki/