「大きな看板が怖い」

どういうわけか、大きな看板が怖い。
大きな看板を目の前にすると、足がすくむ。その恐怖を初めて体験した時のことは、未だに忘れない。
アレは小学生の頃だった。デパートの屋上の広場で遊んでいた時のこと。
デパートは確か、大丸。ミニ遊園地に喜んでいた僕は、ふとした瞬間に空を見上げた。すると、背後には想像もしてなかったような大きな大丸のマークが。 いつもは遠くから見ていたあのマークが、今、すぐ目の前にそびえたっている!大好きだった大丸が、こんな大きな姿に!というような感覚だ。 コレは説明して分かってもらえるのだろうか。例えて言うと、ひらけ!ポンキッキとかを見ていて、急にミツバチのアップを見せられてびっくりするようなものか。
ただ、決定的に違うのは、大丸は襲って来ないということ。
だったら、何故怖いんだということになる。何故怖いのだろう…。
怖いのは大きな看板だけではない。実は、ガスタンクも怖い。
昔、大阪ドームでバイトした帰り、駅までの道に迷って、雨は降ってるわ、暗いわ、誰もいないわで、心細さも頂点に達しようとしていた時に、ふと見上げると、 大きなガスタンクが二つ並んでいた時は、泣きそうになった。コレは別に爆発したらどうしようとか、そういう恐怖じゃなく、ただそこにあるだけで罪なのだ。 普段は遠くから見ることのあるガスタンクが、目の前にそびえたっている恐怖!丸っこい可愛いタンクが、こんな大きな姿に!というような感覚だ。
だんだん分かって来てもらえているような気がしない。
他に怖いもの全部言ってごらん。聞いてあげるから。という感じだろうか。
じゃあ、言わせてもらうと、太陽の塔も怖い。アレは勘弁してほしい。
岡本太郎さんは好きだけど、アレはよろしくない。
モノレールから見ている分にはまだいいが、万博公園の中に入って、芝生の広場に辿り着くまでは最高にイヤな時間だ。 友達と何度か行ったことはあるが、横を通る時は、友達と必死に話して塔のことを忘れる。昔は目が光っていたとか、体の中に入れるらしいとか、全部なかったことにする。 男として、と言うか、人として、太陽の塔が怖いことは絶対悟られてはいけないので、あの瞬間はまさに戦いである。例えて言うと、不良の横を通り抜けるいじめられっ子のようなものか。
ただ、決定的に違うのは、太陽の塔はからんで来ないということ。 やっぱり何故怖いのか自分でも分からない。
先月に引き続き、これらの要素を踏まえて、自分にとって最強のシチュエーションを考えてみる。すぐに答えは出た。
それは―「夜の海に辿り着き、何かあるなと目を凝らすと、海面には自由の女神の上半身。灯台が時々、女神の顔を照らす」コレはヤバイ。
いつも遠くに見ていた女神が目の前にいる恐怖だけではなく、ココが実は地球だと分かるダブル攻撃。あの映画は昼だったけど、夜の海はさらに怖い!
そして、こんな妄想を楽しそうに書いている自分はもっと怖い!
右の写真は、あるボーリング場の前。当然コレもよろしくない。
[コラム] 山内直哉 (隕石少年トースター)
「隕石少年トースター」の座付作家。東京のシナリオ学校でテレビドラマの脚本を学んでいたが、再び舞台に帰還して隕石少年トースターを旗揚げ。 ドキドキワクワクして最後にほっこりした気持ちになれる作品「ピクニックコメディ」を開拓!ほんわかした雰囲気だけど隠れた野心家。 07年には劇場プロデュース「#10」の作家に抜擢され注目を集めた。
劇団サイト=http://www.inseki.jp/