![]() |
|
|
「恋の直滑降。」
中学生の時、修学旅行で長野にスキーに行った。 40人いるクラスを50音順に5分割し、1組8人の班に一人のインストラクターが付き添う、というようなカリキュラムが組まれた僕らの修学旅行。 僕が割り振られた班には、ヤンキーがいたり、クラス1運動神経のないやつがいたり、とにかくヤンチャな班だったが、とても綺麗な20代の女性インストラクター豊村さんが担当となった。 僕らは一同恋をした。 思春期の僕らは「豊村さんと一緒にリフトに乗る権利」を、滑走で競うことにした。 ルールは目標地点に一番最初に到着した者。 豊村さんがボーゲンやシュテムターンやパラレルターンを真剣に教えてくれている中、僕らは断固として直滑降しかしなかったわけだが、班の一人が豊村さんに突っ込みクラッシュし怪我をさせてしまった。 それがたたり学年指導の先生にこっぴどく叱られた。 暴走族かと。ゲレンデのヤクザかと。 その日の夜、偶然にも、シャワーを浴び終えた豊村さんとロビーで出くわした僕は、ここぞとばかりに勇気を振り絞り連絡先を教えてもらう事に成功した。 修学旅行から帰ってから早速豊村さんに手紙を書いた。 そして返事が来て、それが繰り返され、そこから文通が開始した。 約2年程やりとりは続いたのだけど、「結婚します」の連絡があってからは疎遠になり、今はもう連絡先すら知らない。 インストラクター豊村さん、あの時サバを読んでいなかったら今の彼女の年齢は38歳くらいのおばちゃんだけど、今もどこかで中学生相手にゲレンデを溶かしているんじゃないだろうか。 何かの拍子でもう一度会えたなら、僕はまだ直滑降できるだろうか。僕は今、スキー検定2級です。 | |
|
[コラム] 片岡百萬両 (ミジンコターボ) ミジンコターボの主宰であり、演出であり、役者であり、宣伝美術であり、れっきとした器用貧乏。なんともポジティブに活動に取り組み、さまざまな劇団から客演の声がかかる忙しい男。 劇団サイト=http://www.mijinkoturbo.com/ | |